生ける彫刻
盆栽の芸術と科学
特別展 2024年1月5日~3月22日
この冬、盆栽の繊細な職人技と静かな美しさを堪能できる展示が開催されます。屋内スペースでは盆栽の傑作を、屋外スペースではインスピレーションの元となった本来の大きさの木をご覧いただけます。
ソノマ・ボタニカル・ガーデンで静寂の美と繊細な職人技の世界をご堪能ください。今回、レッドウッド・エンパイア・ボンサイ・ソサエティの協力のもと、「生ける彫刻:盆栽の芸術と科学」展を開催いたします。
小さな世界に宿るレガシー
古代にさかのぼる起源
盆栽の歴史は、中国の漢王朝(紀元前206年~紀元220年)にさかのぼります。元々、中国で「盆景」として知られ、相反する2つのものの調和を意味する陰陽を表した、小さな庭を作る技術でした。盆景職人は、木、石、水の要素を取り入れるほか、時には小さな人物像も加えて、自然の美しさだけでなく自然界との精神的なつながりも表現しました。後に、中国からの移民が日本にこの技術を伝え、それが今日の盆栽となったのです。
簡素かつ静穏
禅宗の影響のもと、盆栽は簡素さ、調和、自然との深いつながりを強調するものとなっていきました。鎌倉時代(1185~1333年)の禅僧たちは、生きた彫刻というべき盆栽づくりを、忍耐と正念を教えてくれる悟りへの道とみなしていました。盆栽の複雑な造形は、座禅において求められる規律を反映しています。
絶妙な傑作
時代を経るにつれ、盆栽の芸術的側面は進化しました。江戸時代(1603~1868年)になると、高位の人々の間では、その地位と名誉を誇示するため、特別な技術と造形を持つ最も美しい盆栽が競って作られるようになりました。
時代を超えた美しさ
盆栽の人気は世界に広がり、現在では趣味として、また愛好家の間で広く親しまれています。現代の盆栽作家は昔の技術と現代の感性を組み合わせ、非常に幅広い様式や表現を生み出しています。今回ご覧いただくコレクションは、レッドウッド・エンパイア・ボンサイ・ソサエティの会員たちにより、丹精込めて作られた作品です。
5月の第2土曜日は「世界盆栽の日」です。レッドウッド・エンパイア・ボンサイ・ソサエティや世界中の他の団体とともに、この日を祝いましょう。協賛:世界盆栽友好連盟
盆栽の育成法
しっかりとした土壌
盆栽の育成を成功させる基本原則の1つは、適切な組成の土壌を慎重に選ぶことです。通常は、水はけがよく、十分な湿気を保ちつつ盆栽の根が酸素を受け取れるような、有機成分と無機成分の繊細なバランスを持つ土が理想とされます。ここでは、溶岩、軽石、赤玉土、鹿沼土(日本から輸入した火山性粘土)を混合したものを用いています。この土壌は無機質であるため、多くの場合、木の発育を良くするために肥料が追加されます。
剪定と整形
盆栽の造形には、その芸術的側面の核となる調和と美しさだけではなく、園芸に関する深い理解も必要となります。剪定の際には、頂芽優勢の原則に従い、先端にある頂芽を切り取って枝分かれを促します。木や植物がどう成長するか理解することによって、希望通りの造形に育つように管理し導くことができるのです。こうした繊細な剪定技術は、根に対しても応用されます。
水やりの技術
盆栽において、水やりはそれ自体が難しい技術であり、非常に重要視されます。過剰な水やりは根を腐らせ、逆に水不足だと木にストレスがかかり、葉が枯れてしまいます。木の種類によって必要な水の量は異なります。園芸に詳しい人なら誰でも知っているように、季節、湿度、日照時間なども、各個体が必要とする水の量を左右します。小型の鉢に収まっている盆栽は、気候条件にはさらに敏感なのです。
静寂を形にする
現代の盆栽は、複数の伝統的な形態に使用された技術を用い、各植物の特性を理解し、その自然な生育を尊重するものとなっています。
箒立ち
まっすぐ直立した樹形で、枝は外に向かって箒のように、左右対称な形に広がります。この樹形は、秩序と調和を表しています。
直幹
優美さと左右対称性を表す典型的な樹形である直幹の盆栽は、垂直にまっすぐ伸びた幹とバランスのとれた均等に広がった枝が特徴です。
模様木
有機的で自然な樹形である模様木の盆栽は、ややうねりがあり、曲がった幹と枝がゆったりとした非定型の形を生み出します。
斜幹
上品な傾きを持つ斜幹の盆栽は、平衡を保ちながら片側に優美に寄り、外からの力に立ち向かう自然の抵抗力を表します。
半懸崖
直立と懸崖の間というべき構造を持つ半懸崖の盆栽は、幹が一定の角度に曲がり、枝が繊細にしなだれた樹形です。
文人木
奔放にうねった幹と枝が特徴の文人木の盆栽は、年齢を重ねた智慧と芸術性を表します。
吹き流し
自然界の力である風の影響を優雅に表した吹き流しの盆栽は、幹と枝が一方向に傾き、木が風に抵抗する様子を表します。
株立ち
複数の幹が同一の根元から生えているのが特徴の株立ちの盆栽は、相互の結びつきを魅力的に表した樹形です。
寄せ植え
1個の鉢に複数の木が調和して共存する寄せ植えの盆栽は、小型の森や木立の魅力を表現し、自然界の相互のつながりを象徴します。
その他、よく使われる伝統的な樹形には、懸崖、双幹、石上樹、石附き、筏吹き、舎利幹などがあります。